業務効率化や顧客対応力の向上を目的に、チャットボットを導入する企業が増えています。
一見、ユーザーに選択肢を提示するだけのシンプルな仕組みに見えますが、その裏側では、状況に応じた適切な対応を実現するためのシナリオ設計が欠かせません。
実はこのシナリオ作成こそが、チャットボット運用の中でも特に難易度の高い工程なのです。
本記事では、使用するツールやサービスの種類にかかわらず、チャットボットのシナリオ作成に共通する基本的な考え方と手順をわかりやすく解説します。
本記事でいう「シナリオ」とは、あらかじめ設計・準備する対話のフローやFAQパターンを指し、生成AIが学習データをもとに自動生成するシナリオとは異なります。
実践的なチャットボットシナリオ作成の10ステップ

チャットボット導入後、いきなりシナリオの入力作業から始めるのは、実は非効率です。
高品質なチャットボットを最短でつくるには、FAQを整理してカテゴリ分けするという事前作業を丁寧に行い、手戻りや矛盾を減らすことが重要です。
1.チャットボットの役割を明確にする
実行のステップ
誰のどのような負担を減らしたいのかを具体的に書き出し、チャットボットに期待する役割の優先順位を整理します。
例:オペレーターの負荷削減/24時間対応/問い合わせのハードルを下げる など
目的
チャットボットの役割を「業務効率化」のように抽象的な定義のままにしておくと、シナリオ設計中に導線がブレてしまうためです。
2.シナリオで対応する範囲を定める
実行のステップ
問い合わせ頻度や実装コストを踏まえ、シナリオでは対応しない領域や対象外とするケースを判断します。
例:海外からの問い合わせには対応しない/カスタムオーダーの選択肢は最小限に絞る など
目的
対応範囲は後工程での見直しも可能ですが、最初にある程度定めておくことで、作成したシナリオや分岐がムダになることを防げます。
3.ユーザー像(ペルソナ)を想定する
実行のステップ
性別や年代、職業、家族構成、ITリテラシーなど、誰がどんなときにチャットボットを利用するのかを、できるだけ具体的にイメージします。
例:60代男性が初めてWeb申込みをする(保険)/20代の女性会社員が平日夜にスマホで問い合わせる(EC)/情シス担当が昼間に社内マニュアルとして活用する(SaaS)など
目的
ユーザーのイメージを明確に想定することで、自然な言葉づかいや導線の設計がしやすくなります。
4.想定されるユーザー行動・問い合わせ内容を整理する
実行のステップ
問い合わせ履歴やFAQのアクセスをもとに、ユーザーからの問合せや依頼を一覧化します。
次の工程でカテゴリ分けするので、この時点では内容が重複していたり、分類が曖昧でも問題ありません。
項目の例:問い合わせの種別・主な年代・主な性別・主な時間帯・頻度・優先度・主なデバイスなど
目的
ユーザーの状況や行動を軸に問い合わせ内容を整理することで、より実用的なシナリオ設計が可能になります。
5.内容を目的別にカテゴリ分けする
実行のステップ
整理した問い合わせ内容を、シチュエーションに応じたカテゴリに分類します。
この段階では細かく分けすぎず、後から拡張しやすい汎用的なカテゴリ分けにします。
例:「支払い方法」「請求内容」「領収書発行」→「支払い関連」カテゴリ/「ログインできない」「パスワード再設定」→「ログイン関連」カテゴリ など
目的
問合せ内容を目的別に整理することで、ユーザーが直感的に選びやすい導線になると同時に、シナリオ全体の構造を管理しやすくなります。
6.シナリオを設計する
実行のステップ
カテゴリ別に整理した問い合わせをもとに、「本当は何に困っているのか」「次に迷いそうな点はどこか」など、対話の流れを意識してシナリオを設計します。
例:ソファのサイズを選ぶ → 生地を選ぶ → 色を選ぶ → 納期の案内 → 注文フォームへ誘導(カスタムオーダー)/有休申請ができない→ ログイン状態を確認 → 権限確認の案内 → 対応方法を表示(勤怠管理システム)など
目的
ユーザーの心理や行動順序に寄り添った設計は、離脱の防止や顧客満足度の向上につながります。
7.自然な文章に整える
実行のステップ
企業のトンマナに準拠したうえで、想定しているユーザーにとって読みやすく、親しみやすい表現に文章を整えます。
例:「タイムアウトしました」→「一定時間操作がなかったため、ログアウトしました」とわかりやすく/「〇日に到着予定」→「◯日にお届けします!」とカジュアルな表現に
目的
ユーザーの受ける印象は言い回しひとつで変わります。自然でストレスのない文章にすることが、チャットボット、ひいては企業の信頼性向上につながります。
8.テスト環境でテストする
実行のステップ
シナリオを入力したチャットボットで、想定通りに流れるか、回答の意味が伝わるか、イレギュラー操作でエラーが起きないかといったことを確認します。
他部署メンバーなど、ユーザーに近い目線でテストできる人の協力を得られると理想的です。
※8の工程は、6~8の工程を繰り返し行き来しながらブラッシュアップしていく形になります。
目的
実際の利用シーンを想定して検証することで、リリース後のトラブルや使いにくさを防げます。
9.KPIと改善サイクルを決める
実行のステップ
チャットボットの効果測定指標(KPI)を設定し、定期的に内容を見直すための改善サイクルを策定します。
例:自己解決率/有人対応移行率/完了率/ユーザー満足度など
目的
チャットボットは運用開始後の分析・改善が品質維持と成果最大化の鍵となります。
10.リリース&本番環境でテストする
実行のステップ
正式にチャットボットを公開します。ユーザーとの接点(Webサイト、会員ページ、アプリなど)に適切に設置されているかを含め、再度チャットボットの動きをテストします。
目的
本番環境では、テスト環境では想定できなかった導線のズレや誤動作が起きることもあります。
不具合は早めに発見し、ユーザーから指摘される前に改修することが肝心です。
気を付けるべき落とし穴3つ

1.理想を追求しすぎて完成しない
シナリオ作成に想定外の時間がかかり、チャットボットのリリースが延びてしまうケースが非常に多いです。
ボリュームが多いことが予想される場合は、「まずはよくある質問のTOP3のみリリースし、ユーザーの反応を見て順次追加していく」など、重要な部分からリリースしていく方法が現実的です。
2.FAQをそのまま使おうとして会話が破綻する
シナリオのベースはFAQですが、FAQの文章をそのままシナリオに流用することはできません。
なぜなら、FAQはユーザーが読む前提の文章ですが、チャットボットは対話形式だからです。
長文での説明は分割するなど、対話の導線に整えて再構成する必要があります。
3.融通の利かないカテゴリ分けで改修負荷が高くなる
大カテゴリの名前を具体的にしすぎたり、分岐に細かく連番を振ったりすると、シナリオの追加・修正の負荷が高くなります(適切な挿入位置が見つからない、大規模な連番の振り直しが発生するなど)。
ルールを決める際は、わかりやすさだけでなく柔軟性も意識しておいてください。
重要なのは、ユーザーの“意図”を意識すること
ユーザーは「パスワードを忘れた」と言うとは限りません。「ログインできない」「認証できない」「画面が止まった」など、表現はさまざまです。
シナリオ作成で大切なのは、「ユーザーは何に困っていて、どうしたいのか」という意図をベースに設計すること。
ユーザーが困っている状況を具体的に想像し、それに応じたストーリー設計でシナリオを組み立てていくことが成果の出るチャットボットにつながります。
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