2024年5月に公布された改正育児・介護休業法が、主に2025年4月1日に施行となります。
これは仕事と育児・介護を両立しやすくするため、既存の措置を拡充したり、制度の周知を企業側に徹底させたりするものです。
制度を利用する側の労働者が正しい知識を持っておくのはもちろん重要です。
しかし今回は企業に課せられる義務も変わってくるため、企業側も変更点を認識して対応しなければなりません。
この記事では、厚生労働省の告知を引用しながら、改正のポイントをわかりやすく解説していきます。
目次
2025年度施行 改正育児・介護休業法とは?
改正育児・介護休業法とは、主に2025年4月1日から施行される新しい育児・介護休業法のこと。2024年5月に公布されているので、その内容はすでに明らかになっています。
ちなみに「公布」は成立した法律や政令を国民に周知すること、「施行」は実際に効力が生じることなので、2024年9月現在は「内容は周知されているが、まだ守る義務はない状態」と言えます。
今のうちに、しっかりと理解しておく必要があります。
改正の趣旨
今回の改正の目的は、男女ともに仕事と育児・介護を両立しやすいようにすることです。
現行の法律は主に3歳未満の子の子育てを支援するものですが、保育園児や小学生になれば働きやすくなるかというと、決してそうではありません。
また、親の介護をしながら働く人も増えており、それを理由に離職する「介護離職」も問題になっています。
そのため、制度を使える年数を延ばす、テレワークを努力義務にするといった法改正が行われます。
改正育児・介護休業法の概要
今回の育児・介護休業法の改正は、具体的には以下の3つの目的に分けられます。
1.子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
これは言葉そのまま、「子どもの年齢に応じて柔軟な働き方ができるようにしましょう」ということです。
そのためには現行の「3歳まで」をメインとした施策では足りないため、一部は小学校入学まで、あるいは小学校3年生まで使えるように拡充されます。
2.育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
2つ並んでいるので少し難しく感じますが、「育児休業の取得状況の公表義務の拡大」と「
次世代育成支援対策の推進・強化」です。
いずれも企業に育児支援を促すための法律で、労働者に直接的な恩恵があるわけではありませんが、自社がどのような対応をしているのかチェックしておく意味はあります
・育児休業の取得状況の公表義務の拡大
現行は従業員が1,000人を超える企業が対象だったのが、300人を超える企業となります。
・次世代育成支援対策の推進・強化
次世代育成支援対策推進法は、子育て支援を企業に促すための法律で、企業に行動計画の作成を義務付けたり、目標達成した企業に認定マークを与えたりしています。
平成15(2023)年に10年間の期限付きで成立したのですが、今回2度目の「10年延長」となっています。
3.介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
これも言葉のまま、「介護離職を防止しましょう」ということです。
育児と違って年齢での線引きが難しいため、措置の拡充は少なく、改正内容は「企業側は支援制度の内容を周知すべし」という段階にとどまっています。
育児・介護休業法はどう変わる?
改正の趣旨と概要がわかったところで、具体的な変更点を説明していきます。
企業は何をすべきなのか、労働者は何ができるのかがわかります。
1.子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
上記は、厚生労働省の資料にある図です。
水色が現行、アイボリーが今回追加された部分なので、「今までは3歳までだけが支援対象だったのが、小学校入学まで(一部は3年生まで)延びた」ことがわかると思います。
①3歳までは、テレワークを努力義務とする
3歳までの子どもを持つ労働者のために「時短勤務制度」の準備が義務付けられていましたが、それに加えて「テレワーク」も努力義務となりました。
テレワークが可能な仕事に就いている人に対しては、企業は認める努力をする義務があるということです。
また、時短勤務が難しい人への代替措置は「始業時間の変更等」でしたが、こちらにもテレワークが選択肢に加わりました。
②3歳~就学前までは、「柔軟な働き方を実現するための措置」が企業に義務付けられる
3歳~就学前の子どもを持つ人に対して、企業は以下から2つ以上の制度を用意することが義務付けられます。
そして労働者は、与えられた選択肢から1つを選ぶ仕組みです。
- 始業時間の変更等
- テレワーク(10日/月)
- 保育施設の設置運営等
- 新たな休暇の付与(10日/年)
- 短時間勤務制度
短時間勤務もありますが、主にフルタイム勤務を続けてもらうための制度改正と言えます。
③3歳~就学前の子どもを持つ人に対して、残業を免除する
所定外労働の制限 (残業免除) の対象が、現行の3歳未満から就学前まで拡大されます。
④看護休暇を取りやすくなる
現行の看護休暇はその名の通り、子どもの病気やケガ、通院のための休みでした。
また、取れるのは未就学まで、勤続6ヶ月未満の人は取れないといった制限がありましたが、以下のように緩和されます。
- 入学式や卒業式、学級閉鎖等でも看護休暇を取れるようになる
- 小学校3年生まで取得できる
- 勤続6ヶ月未満の労使協定除外とする
⑤3歳~就学前までの子どもを持つ人にも、制度についての個別周知・意向確認が義務付けられる
現行では、3歳未満の子どもを持つ人に対する「育児休業制度の個別周知・意向確認」のみが企業の義務となっていましたが、改正後は3歳~就学前までの子どもを持つ人への「柔軟な働き方を実現するための措置」についての周知と意向確認が義務付けられます。
⑥仕事と育児の両立に関する意向を個別に聞くことが義務付けられる
制度についての個別周知や意向確認に加えて、個別に意向を聞き、配慮することも義務付けられます。
家庭の事情により離職せざるを得ない状況になることを防ぐためです。
※⑤⑥の内容は、2025年10月施行
2.育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
こちらは企業側の対応のみで、労働者側には直接的な制度拡充はありません。
しかし、自社がどのような対応をしているのかチェックしておく意味はあります。
①育児休業の取得状況の公表義務の拡大
現行は従業員が1,000人を超える企業が対象だったのが、300人を超える企業となります。
大企業だけでなく中規模の会社にも情報公開させることで、育休取得を促進させるための改正です。
②次世代育成支援対策の推進・強化
より具体的な計画を立てるため、育児休業の取得状況や労働時間といった数値目標を定めることが義務付けられました。行動計画は、都道府県の労働局に届け出ます。
計画の策定は、常時雇用する労働者が100人を超える企業は義務、100人以下の企業は努力義務です。
3.介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
今回の改正では、制度の周知が特に強調されています。
介護や福祉に関連する制度やサービスを知らないまま介護離職に至ることを防ぐには、制度の周知と制度を利用しやすい環境整備が重要なためです。
その他、育児と同様の改正も行われています。
①介護と育児の両立に関する意向を個別に聞くことが企業に義務付けられる
労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た時に、企業は両立支援制度等について個別の周知・意向確認を行うことが義務付けられます。
② 早期の情報提供や雇用環境の整備が企業に義務付けられる
介護を始めた労働者への情報提供や、労働者への研修やセミナー受講等の環境整備も義務付けられます。
③テレワークを努力義務とする
「家族を介護する労働者に関し事業主が講ずる措置」として、「テレワーク」が努力義務となりました。
テレワークが可能な仕事に就いている人に対しては、認める努力をする義務があるということです。
④勤続6ヶ月未満でも介護休暇が取れるようになる
子どもの看護休暇と同様、勤続6ヶ月未満の労働者でも介護休暇を取得できるようになります。
テレワークで、改正育児・介護休業法に対応できる
今回の法改正の目的は、より柔軟な働き方を実現することです。
改正育児・介護休業法の中でも何度か登場するように、テレワーク(リモートワーク)は柔軟な働き方を実現するための有効な方法だと言えるでしょう。
もちろん、テレワークにしたからと言って子どもと遊びながら働けるわけでも、食事や排泄のフォローをしながら働けるわけでもありません。
しかし、テレワークができることによって、
- 時短勤務の人が、通勤時間の分だけ長く働ける
- オフィス出社なら1日取ることになる看護・介護休暇が、半日で済む
- 学級閉鎖の日に看護休暇を取ることなく、最低限必要な仕事ができる
といった効果は十分に考えられます。
オフィスに保育施設を作ったり、追加で10日の休暇を付与したりすることに比べたら、コストのかからず生産性の上がる選択肢ではないでしょうか。
来年の改正法施行まで、あと半年ほど。
労働者の方は自分に合った働き方を、企業側の方は自社にフィットする環境整備を考えてみてください。
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